Q1:森田神経質を見分けるのには?

  Q2:森田神経質の短所ばかりが気になるのは何故?

  Q3:外来面接の一人当たりの時間は?

  Q4:日記療法では心の中のことは書いてはいけないの?

  Q5:感情そのまま率直に感じさえすれば症状が軽くなるのか?

  Q6:森田療法と薬物療法は同時に行なうのか?

  Q7:断薬後1年で何もなければ良くなったのか?

  Q8:睡眠障害に対する森田療法は?

  Q9:神経質は育った環境が関係している?

Q10:疾病恐怖の方の病院回りへの対処法は?

Q11:自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群への応用は可能か?

Q12:薬を変えてから調子が悪く予期不安で不眠だが?

Q13:家事や子育て、介護に強い抵抗があり、女性として絶対しなくてはいけないものか?

Q14:神経症で相手が悪感情を持っていると感じてしまう

Q15:なりきる態度を養う場合の治療者の対応は?

Q16:喉の圧迫感があるが病名は?

Q17:緊張し易く手や声が震えるがその対応は?

Q18:仕事の失敗後、また失敗するのではと考えてしまうが?

(第147回心の健康セミナー「森田正馬の神経質概念とは」の質疑・応答より)

Q1:森田神経質を見分けるのには?

森田神経質は、反省心が強いというか、自己内省性が強いということ、生の欲望が旺盛であるかどうか、ということの2点がしっかりあるかどうかを吟味していただきたいと思います。
現実に根ざした悩みではなく、自分さえ良ければいいとか、自分の考え以外受け入れたくないとか、迷惑を掛けても平気とか、周りへの配慮がないようなことでも、何も葛藤が起きないというような方は神経質とは言えないので、やはり何か現実の生活をしていく中で起こる、いろいろな葛藤があるということも大事な要素ではないかと思います。

Q2:森田神経質の短所ばかりが気になるのは何故?

私自身も長所ばかりで生きているかというとそうでもないなあと思うので、長所と短所を行ったり来たりしながら、生きて行くのが人間ではないかというふうに思います。
やはりその短所を反省できるというところが、特に神経質の特徴なのではないかと逆に思うわけです。むしろ短所がある、ああ恥ずかしい、嫌だっていう気持ちを持っているということが大事です。
短所があるということを理知的に理解するだけでは駄目だと思うので、その短所がどういう時にでてしまって、どういうことが困るのだろうということを、それぞれのその生活の中で具体的に悩んで、要するに短所がでてしまうと実際の生活上困ることがあると思います。
それで反省なされると思いますので、例えば、面倒くさいということがあれば、面倒くさがりのためになかなか思うような生活ができて行かないと、なかなか自分が向上して行かないということに悩むのであれば、面倒くさい気持ちはそのまま持ったままで、自分なりになりたい自分として、面倒くさい気持ちは多少我慢しないとなかなか先に進まないかなということで、実践して、どういうことをやったら自分の中で自信がついてくるかなということやれるところからやって行くのもいいのではないかと思います。
主婦の方ですが、仕事もできてない自分、仕事をしていないとか長続きしないとかいうことを悩んでおられて、でもその人は、そうこう言いながら、何となく仕事について、今やっていらっしゃいますが、何となく充実感は得られているようなことを最近は語るようになっているので、この方にとっては、お仕事をなさるということが取っ掛かりとして自信につながっていることなのかなあと思います。
やはり、その短所というのは自分の苦しみを抱えきれないというところから起こってくるので、まずは前の一歩がなかなか出ないという場合には、時には自分の心の中をのぞいて見て、自分はこういう気持ちがなかなか抱えられないのだなあ、だから逃げてしまうのだなあというところをまずは自覚するだけでいいのではないかと思います。

Q3:外来面接の一人当たりの時間は?

初診の場合は、30分〜40分位の範囲になります。
再診は、平均すると10分程度になるかと思います。場合によっては、先にお伝えしたようなやま場の時には30分位かかる時がありますけれども、だいたい短くて5分位、長くても10分〜15分、まあ20分かかる場合もあるし、そんなにかけないこともあります。
やま場がその方によってあるので、そういう時に長めになったりします。

Q4:日記療法では心の中のことは書いてはいけないの?

外来の中では、特に感情を入院よりも拾いあげないと、本来の本音とか自分の中で抱えている感情というのがなかなか見つけられないので、自分の中に抱えている感情ということを書いていただくことはあります。
森田先生は、自分の感情はいろいろ、患者さんの感情はいろいろ書いてありました。
ただそれに対して、森田先生はそれに事細かく返事するというよりは、理知的にいろいろこうではないああではないという、理論武装している患者さんに対しては、それに対して辛辣なコメントを書いていました。こんなことを書いても意味がないということを書いていました。

Q5:感情そのまま率直に感じさえすれば症状が軽くなるのか?

(強迫性障害の治療で)大まかにはそんなことでいいのではないかと思いますけれども、それに加えさせていただければ、自分自身を見つめるということを加えておきたいと思います。
強迫性障害の方で、入浴に5時間かかる、小学生の頃からというと大変だろうと思います。その方のご相談ですけれども、かなり生活の中で困っていらっしゃるようなので、みんなどうなのだろうなというふうに思うのですけれども、入院ができる施設が少ないので、今は関西にはないです。慈恵医大はやっていますけれども、少し動くきっかけとして、入院治療を候補の一つとして挙げていただければと思います。

Q6:森田療法と薬物療法は同時に行なうのか?

薬物が必要な場合は使うことがありますので、全員が全員使わないというわけではありません。ただ補助として使うという意味合いです。
例えば不安だから飲むというような、頓服としての使い方は不安を無くすという観点からあまり好ましくないですね。どちらかというと、長時間作用型というメイラックスとかセディールとかそういう不安を全体的に下げるというお薬を使って、不安になったから、多くしたり減らしたりというようなことをするのは、厳密に言えば森田療法ではやっていません。
時間を決めて飲んでいただくとか、そういうことをわりと指示することが多いです。ただ不安を抱えることが非常に苦しいという方には、容認をして飲んでいただく場合もあります。ただある程度の時期に来たらその飲み方を如何しようかとお話しすることもあります。

Q7:断薬後1年で何もなければ良くなったのか?

お薬は楽になる為のものなので、楽になるという目的で使うということなのでお薬がないということで何が起こるかというと、不安をよりナマで感じるという、そういう違いなのですね。
だから、不安を抱えていたくないとか、不安をどうしても受け入れられないという方は、お薬からはなかなか離れにくいという苦しさはあるかと思います。そこは少しジレンマなのですけれども、そうなった時点で、やっぱりお薬はある程度飲んでいた方が良いという結論に至る方もいらっしゃるし、お薬を苦しくても止めたいという方もいらっしゃるし、そこはその方それぞれ違う目標になるので、そのつどお話し合いをしてやります。

Q8:睡眠障害に対する森田療法は?

慈恵医大の山寺先生という先生が、森田療法と睡眠治療ということで、不眠症に対しての森田療法の論文を出したり、研究されていた時期があったりして、今はどこまでやっていらっしゃるか分かりませんけど、おやりになっていました。
ただ、私たちが扱っていないかというと扱っています。私も入院例で、不眠症の方でもう生活が出来なくなったということで、入院していただいて、日常生活をとにかくやりましょうということで、眠れなくてもいいから横になって時間になったら起きて、というふうに生活を整えるということを、入院治療としてやって、かなり良くなった方はいらっしゃいました。今はもう外来は、良くなられたということでいらっしゃっていないですね。
森田も不眠症は扱いました。ただ、こういう人っていうことで例が挙げられているのがすごく少なくて、神経症性不眠と今は言われるような内容の方です。最初の外来だけでやったらしいですけど、最初の日に、一番眠れない体位をやって欲しいと、それをやって頂いたらどんな感じ、それで眠れないというのがどんな苦しみなのかをよく観察して次の回の時に言って欲しいということをお伝えしたら、あっさり眠れたそうです。では、今度は一番眠りやすい体位で寝てください、とお伝えしたら、今度は一睡も出来なかったというお話をして、結局その眠れるように眠れるようにということをなさることが、よけいに眠れなくなっているのだという説明をして、それで良くなったという例を報告しています。

Q9:神経質は育った環境が関係している?

半分あっていると思います。森田正馬先生とか高良武久先生がおっしゃっていたのは、素因があると。ヒポコンドリー性基調という素因があって、環境があって、それで何らかのきっかけがあって発症する、というようなことを言っていますので、環境だけではないと思います。

Q10:疾病恐怖の方の病院回りへの対処法は?

原因が病気でないと分かると落ちつかれるということなので、何回も同じことで繰り返し掛かるということをされなければ、一回掛かって落ちつくっていうことであれば、少し様子を見られてもいいのかなと思います。ただ、繰り返し繰り返し行ってご本人も違和感がでてきたと、少し行き過ぎではないかと、どうにも止まらないというふうに困るということがあれば受診を勧められたらいかがでしょうか。

Q11:自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群への応用は可能か?

森田療法学会の若手の先生で、松浦先生が治療者側が患者さんの個性とみなすとか、患者さんそのものを受け入れるというような意味合いで森田療法の考え方を活かしているというような報告がありました。
ただ、自閉症スペクトラムやアスペルガー症候群の方もいろいろなタイプとかいろいろな性質の方がおられるので、神経質の方であるのでしたらある程度部分的には使えるのかなというふうに思います。
どのようにアプローチするかというのは、ある程度病態の特徴というのがあるので、ある部分からはなかなかご理解いただけなかったり、やっぱり先程いったみたいに神経質ぽくない部分もあろうかと思うのですね。衝動的になるとか、想像しにくいというようなところがあるので、そこに関しては、そういう少し自分の中で障害を抱えている部分があって、その範囲の中で人と関わって行くには、自分にはそういう特徴があるからそういう特徴の中でどういう程度まで関われるだろうかというような意味合いで関わることはできるのではないかなと思います。

Q12:薬を変えてから調子が悪く予期不安で不眠だが?

お辛いと思いますけれども、治療者の方とよくご相談なさって、まずは一番安心できるお薬というのを選ぶというところから始められたらどうかなと思います。まずはお薬の調整を主治医の先生とご相談なさったらどうかと思います。

Q13:家事や子育て、介護に強い抵抗があり、女性として絶対しなくてはいけないものか?

これは抵抗を感じてしょうがないのではないかなと思うのですけれど嫌ですよね。大変なことだと思いますし、何で私がという気持ちもやっぱりあたり前かなと思います。
先程、私がここで言ったように、そうはいっても現実の中で、これは誰かがやらなければならないだろうなというような、現実のやらなければならない事柄というものがあるかと思うので、それをやらないで済まして、自分の気持ちがやらないで済ましたとしたらどう感じるか、ということを少し想像してみていただく、あるいは実際やらないということを実行してみて、そこでご自分がどういうふうな気持ちになるかということを試していただくといいかなと思います。
やはり人間現実の中で生活しているものなので、やらないで済ませた時に本来の自分の考え方とか感じ方というのが出て来ると思います。やるやらないということが必ずしもこうすべきということで、女性の役割っていろいろ言われますけど、こうすべきということで決まっているわけではないので、新しい考えのように思われると困るのですけれども、森田的に考えればしないでやって自分の気持ちがどう動くかというのを考えてみて頂いてもいいのかなというふうに思います。そこで、やはりやった方がいいかなと思ったら少し我慢しながらやってということでいいのかなと思います。

Q14:神経症で相手が悪感情を持っていると感じてしまう

これについては、ご本人が困っていらっしゃるのでしたら、ぜひ受診をお勧めいただくといいかなと思います。ご本人に対しては、悪い方にどんどん考えていって自分で苦しみをつくっているように見えて、大変苦しそうだから心配なのだけど、というようなことをお伝えして、受診を勧められたらどうかなというふうに思います。

Q15:なりきる態度を養う場合の治療者の対応は?

これは私も試行錯誤中で、これというものはありません。
ただ行動と感情に対して、例えば、周りの状況を見ながらとか、感情を見つめながら心の事実に従った行動とか、そういうようなことを日々試行錯誤しています。
例えば、法事に参加したくないというような方の場合、実際に外来の中で森田療法をやって行く場合に、やるべきであるみたいな方向になって、それは家族としては当然でしょうということで、行きましょうというようなアプローチをする場合も、かつては私もありましたが、それは森田的ではなくて、参加したくないと思えば参加しなくても、いやいや参加してもどちらでもいいと思います。今の私のスタンスはそうなっています。そこでそれで終わりではなくて、それをした後に、その後どういう気持ちが起こるかということを必ず聞いています。
行かなくてすっきりしましたというのでしたら、それは今のその人の心の事実であって、やっぱり行けば良かったとか、やはり行かないとまずかったなあと思ったということであれば、それがその方の心の事実で、行ってやっぱりすっきりしたというのでしたら、その方のその方らしい選択肢ということで、その人らしさというのが違う方向に行くと必ず不快感を覚えるので、それを行動した後に聞いて頂くといいかなと思います。 あとは想像してどうかなあということで決めて頂いてもいいかなと思います。

Q16:喉の圧迫感があるが病名は?

とらわれているのですけれど、これは普通神経症か、対人恐怖かちょっとはっきりしたことは申せませんけれど、そのあたりかなと思います。

Q17:緊張し易く手や声が震えるがその対応は?

先程の講義を思い浮かべていただいて、震えの症状を気にしないようにすればいいというのは客観的に考えた、周りの人が考えることだと思います。
そのくらい別にあったっていいじゃない、気にしなくていいじゃないっていうのが、周りの人の考え方ですけれども、自分の事実としては、やはり気になるのが事実なのだと思います。だから気にせず症状を受け入れられるようにということは、もう望まない方が良いです。気になりながら症状を手が震えるのがいやだなあと思いながら、気になりながら生活をすると。もっと言えば思いっきり気にしてくださいと。
声を震わせながら、手を震わせながら関わって行くというようなことをしていくうちに、そこの拘りがなくなってくると自然に、本態性心線というものがありますけれども、自然にその震えというものが整ったり、震ええているけど、まあいいやというふうに折り合いがついてきたりということが出来るようになると思います。
そうなって行くまでには、やはりある程度の時間が掛かるのですね。
一回やったから、ぱっと良くなるというわけでは絶対ないので、先程お話した例では、ずっと煮詰まってきたから、ぽっと変わったということなので、大概の方は気になりながらやるということで、でも手が震えるのがどうして嫌なのだろうね。
声が震えるのはどうしてあるといけないのかなあというような質問を、私は外来ですることもあります。そうするとご本人の中で見せたくない自分の弱い面とか、何かこういうふうに思われるのではないかとか、そういうその拘っている感情とか考えというものが出て来るので、そこをまた取り上げて話を煮詰めて行くということになるかと思います。

Q18:仕事の失敗後、また失敗するのではと考えてしまうが?

非常に辛いということで、涙も出てしまうということですけれど、この対応策というのは具体的に悩むことです。結局、仕事で失敗をするということは、とても大事な問題点ですよね。だけど、それぞれの失敗事象はその後忘れるというところがいけない。要するに少し厳しい言い方をしてしまいましたけど、失敗事象を絶対に忘れないということが大事なんです。何を失敗したのか、どうして問題が起きたのか、それらを具体的に憶えていないと、絶対、次やるのですね。だから、失敗が自分は多いとただ思って漠然としているだけでは、また失敗は繰り返します。
だけど作業の途中で、いつもここでミスをするというふうになれば、こういう時には、特に慎重にいつもより確認を多くしようとか、こういうふうに作業をやっていると話しかけられるとパッと忘れてしまうということであれば、話しかけられる前に応える前に、少し待っていただけますか、というふうにやって対策を練ると、そういう具体的に悩んで行くということをすれば、ミスは減ると思います。
ミスを減らすということが一番大事であって、その失敗事象というのは忘れてはいけないというのはそういう意味であって、その失敗をすれば当然苦しくなるし、自分を必要以上に責めだします。それが積み重なってくれば、どんどん苦しくなってくるので、それは、やはり私は避けたいことだと思います。だから具体的に悩んでください。