不安神経症の部屋
「突然の病気重症化不安」 '24.01
Kさんは薬の副作用をきっかけに、強い不安と恐怖心に悩まされ、体重減少や無気力などうつ症状にも悩まされているとのことです。それだけ体重も減り、体力も落ちると、身体も頭も思うように動かず、本当にお辛いことだと思います。そんな中、簡単な家事と、毎日ウォーキングと外出を続けておられるのはとても大事なことですね。
森田先生は死への恐怖を持つ患者さんの治療についてこんな風に述べられています(『療法』第8章「神経質の療法」より)。「死を恐れるのは人情である。ただ発作の時はじっと耐えて必死になって恐れていれば良い。死は余(医者)に任せて置いて家族に大騒ぎをさせてはならない」。死は誰にとっても怖いものである。発作が起こって怖くなった時にはじっと耐えて恐れていること、人の助けを借りずに発作が経過するのを待つこと、容体を家人に訴えず、自分で抱えていくことが病気を軽快させるうえで極めて有効であるとしています。
一人で行動できるようになりたい、家族に迷惑をかけたくないと思われているKさんにとっては大きな指針になるのではないでしょうか。
一方で、それがあまりにも現在の状況で厳しく、ご本人ご家族の疲弊だけが増すようであれば、主治医の先生と相談されて、一旦入院治療を検討してもよいかと思います。身体が疲弊しきって落ち着かない状態で、いくら自分でやってみようと思っても難しいこともあるかもしれません。入院には勇気がいるかもしれませんが、身を任せて治療を受け、しっかり休息することで、心身ともに回復をすることは恐怖心と付き合う上でもとても大切な基礎になると思います。この場合の入院は森田先生のおっしゃる病気の専門家である医師にまずは治療を任せるというところにもつながると思います。
いずれにしても、これまでの検診の結果で病気が大きく悪化していない事実、そして、診断の結果を恐れるがゆえに緊張が高まり、身体の不調が増しているからくりを理解して、今どんな風に時間を過ごすことが自分と家族にとって一番後悔がないかを考えてみてください。
(矢野勝治)