その他の部屋

Aさんが長らくうつ病で悩んでいます。現在も休職中です。午後11時から翌日の午後3時まで寝てしまい、起きてからは何をするのもおっくうで、困っています。Bさんは「朝は決まった時間に起き、きちんと食事をし散歩などをされてはいかがでしょうか」と助言しています。Cさんは「とにかく、何をどうすればよいのかわからずになにも手につかないで困っています」と書き込みをしています。
このお二人の症状は異なっていますが、何をしてよいのか、ほとほと困っていることは同じようです。うつ病では急性期を除いて、特に神経質な人には休息は逆効果な場合が多いようです。またDさんのように混乱して、何をしたらよいのか困っている人も多くいます。
私はまず自分の人生の習慣を作ることと助言します。Bさんが言っているように、食事、散歩、読書、掃除など何でもいいのです。それを自分の人生の習慣だと心に定め、それを自分なりのペ−スでやり続けることです。それがお二人の悩み解決の第一歩に非常に役に立つでしょう。

Aさんが「・・・1人暮らしで休みの日も気が安らぐことがなく悶々としています。精神科に行っても気が狂ったような話をして、すべてのことに逆恨みをし、自分勝手極まりない話をして泣き崩れ、相手にされていないようです。いろいろ薬を変えてもらってますが・・・。もうこのままでは限界です」と書き込んでいます。それに対してBさんは「・・・森田を学び始めてそう時間のかからないところで、神経質者は人一倍欲求水準が高く、それ故に悲嘆にくれると一層強く絶望感が強くなるということを知りました」と述べています。苦悩はその欲望ゆえであると私も思います。われとわが身を嘆くのも、よりよく生きたいという欲望ゆえです。その欲望をしっかりと実感するためにも、まずは自分でその悩みを書き出してみることも一案です。自らを語り、それを通して自分を知ることは、私たちが悩みの渦に入ったときの重要な解決法のひとつです。

「年齢が増し、上司として、父親として、夫として、一人の個人として自分の表現が思うようにできないことが非常に苦痛です」と述べています。いわば成人期から中年期にかけての「生きることの行き詰まり」とも考えられます。いままでは若さに任せて何とか 突っ走ってきた。しかしもうそれほど若くはない。社会的、家庭的な責任も増えてきた。このような状況で人はしばしば行き詰まります。

多くの人はこのような場合に完全主義的となり、仕事も家庭も、すべてをうまく、しっかりとやらなくては、と肩に力が入ります。わたくしはむしろ肩の力を抜くことを勧めます。ほどほどに、少しゆっくりとしたん。
このように頭の中でぐるぐると考えているとさらに自分のしたことが不確実に思え、何が真実で何が自分の思い込みかわからなくなります。そのようなときには、このようなぐるぐる回りは放っておき、今自分にできることは何か、を自分に問うてください。そしてできることからまず手をつけていくことが肝心です。
アルバイトに行っているとのこと、そのことも大切です。日々が恐怖そのものですが、それにしっかりと直面し、強迫のぐるぐる回りをそのままにして、今できることに注意を向けていく努力が次第にあなたを変化させていくのです。

ここでのやり取りも活発で嬉しい限りです。自分の悩み、疑問を書き込み、そしてさまざまな人たちとやり取りをして、また書かれたものを読み、そして実際の行動に踏み込んでみる。そこで得られた体験と書かれたことを照合し、それをまた書き込んでいく。そのことが自分の体験を明確にし、深めていく作業です。それはまた生活の 発見会の集談会への参加の経験や森田療法の治療そのものともいえるのです。
Aさんは、「18歳の息子の事で色々と悩んでいたのですがこのページを見て実は私自身の問題である事に気づきました。もっとたくさんの内容が知りたいので参加したいと思います」と書かれています。親は子供のことを当然のことながら、あれこれ心配するものです。親としての「こうあるべし」という押しつけになっていないのか、内省することからむしろ親子の関係は変わっていくのです。その点でAさんの気づきは重要です。
またBさんが「仕事に完璧を求め、ダメな自分に劣等感を持ち、恐怖を感じて、立ち止まってしまうことについては、森田的にはどのように考えているんでしょうか?」と書き込んでいます。つまり「生きること」に伴う苦悩です。そしてBさんは、Cさんの助言をしっかりと理解し、もう一度自分として生きることに取り組みだしたようです。「少し、不安の雨や冷たい視線に打たれながら、生きてみようかと思います」と書いています。

わたくしの著書、「我執の病理−森田療法による生きることの探求」を読んで感想を寄せてくれています。著者としては嬉しい限りです。ありがとうございます。森田療法は古くてそして、新しい精神療法です。西欧的な考え方が行き詰まった21世紀では、さらにその重要性を増すだろうとわたくしは確信しています。わたくしは森田療法の基本を、“わたしたちに元来備わっている「固有で自然な生」をどのようにつかみ、自分の人生に表現していけるのか、それが「神経症的とらわれ」の最終的な解決である”とする考え方、と理解しています。
ある方が、うつ状態で悩んでいるようです。治療は受けているのでしょうか。まずうつ状態ならば、適切な薬物療法を受けながら、森田の智恵を学び、それを日々の生活に生かしてください。森田を学ぶことは自分を知り、自分を生かすことです。