その他の部屋

Sさんは社会人になり、配属先が決まって3か月が経った頃から、気持ちの落ち込みが激しくなったとのことです。今もとても前向きにすごく頑張ろうとしておられるようですが、不安がかなり大きそうです。

配属後、気分が落ち込み始めたきっかけは何かあったのでしょうか。具体的に「課の足を引っ張っている」と思う事象があったのか、仕事での上司などの評価は実際にどうなのか。どのように落ち込みから回復するのか、落ち込みと回復の仕方に周期や共通点はありそうなのかについても伺ってみたいです。

もし、「まず目の前の仕事に集中してやって」みても、しんどさがあまり続くようであれば自分のやり方のせいと決めつけず、早めに相談機関で相談をし、自分が何によって辛くなっているのかを整理し、理解していくことをお勧めします。Sさんが宴会の幹事がかなり負担と気づいていらっしゃるのは大事な点かもしれません。そんな風に、何が落ち込みの誘因となっているかわかっていくことが大事だと思います。優秀な方でも、環境の変化や、仕事の種類や課題の出され方によって困難が生じることもありますし、特にSさんの場合は、高校3年生の時から、「気分がよくなったり悪くなったりの繰り返し」で、大学→社会人と落ち込みがひどくなって行かれているとのことなので、誘因があるのかないのかも含め、そのメカニズムを知るのが大事なことだと思います。

会社の重要な数字を扱っておられるという文面からは、Sさんは会社にも期待されておられ、ご自身もしっかり仕事を行っていきたいというお気持ちをお持ちの方なのだと思います。そのお気持ちと能力を生かすためにも、得意不得意も含めて自分を知り、場合によっては職場とも相談していくことで、より長くより良い形でSさんの力が仕事に生かされることになるのではないかと考えます。
(今村祐子)

Cさんが対人関係で悩んでいます。主訴は嫉妬とのことですが、海に入水自殺したこともあり、うつ病とも言われたり、現在は強迫性障害と妄想型統合失調症の合併と診断されているとのことです。これまで診断名が変わったこともあり、自身の病気が何なのかを悩まれています。そんななか、仕事をはじめたものの覚えが悪く不器用でミスも多く、仕事が出来ないなら辞めようかな、自分が惨めで時には自殺したいとも考えるようです。

Mさんは、病名聞いたときに主治医の先生に「病気にえらいもひどいもない、軽い統合失調症なら生活できるけど、重い強迫性障害では身動きを取れない人もいる、だから病名にこだわることはない」と言われたことで、それを機に病名へのこだわりがなくなったことを書かれています。

それを見てCさんも「病名にこだわってもどうにもならない」と書かれています。そうですね、病名にこだわらず、仕事が出来ない自分に周囲がイライラしていると気にしすぎることなく、不安を持ちながら(必要に応じて周囲の人にやり方を聞きながら)出来ることをひとつひとつ取り組んでいって下さい。まだ仕事をはじめて約1か月、投稿を見るとどうにかしたい思いが伝わってきます。やっていくなかで慣れてきたりコツがつかめてきたりしますし、やりたいことや自分に合うことも見えてきたりすることもあります。頑張って下さい。
(矢野勝治)

Kさんは「自分が相手の役に立っていないのでは」と少しでも感じると、不安と罪悪感から自ら関係を破壊してしまい、困っていらっしゃいます。

日常生活をしていて、「電車の中でご高齢の方に席を譲って、喜ばれた」というように、直接的に「誰かの役に立った」と実感できる場合もあります。しかし、「いつもやっている仕事が誰の役に立っているのか」などすぐには実感できないことも多いと思います(それでも一生懸命に取り組んでいることは巡り巡って誰かの役に立っていることが多いのでしょう)。ですから、いつも「誰かの役に立っている」と実感しながら生活するのは難しいことですよね。

人は皆、誰かに助けられて生きているものだと思いますが、対人関係というのはいつも同じ関係ではなく、距離が近づいたり、離れたりと変化するものですから、人との関係の中で、いつも「相手の役に立った」という実感を得ることは尚更難しいことだと思います。

Kさんは過去に色々と大変な思いをされてきたようですね。そのことから自信を失ってしまっているのかもしれません。また、「どうせ捨てられる」と感じて関係を破壊してしまうのは「捨てられたくない、傷つきたくない」という気持ちの裏返しのように思えます。

Kさんは旦那様から「居るだけで良い」と言われているということですが、それはKさんという存在が旦那様の「役に立っている」ということなのではないでしょうか。そうであるならば、今、身近にいらっしゃる人を大切にして、関係を破壊するのではなく、近づいたり離れたりしながらも、関係を長続きさせていくことを目標にしてみてはいかがでしょうか。多少関係が壊れても修復できる関係を目指してはいかがでしょうか。「居るだけで良い」と旦那様から言ってもらえるKさんは自分が気付いていない魅力が沢山あるはずです。実感はすぐには得られなくても、粘り強く続けていってくださいね。
(谷井一夫)

こんにちは、Pさん。倦怠感や頭重感などが持続しているとしたら、それはPさんにとってとても苦しいことだと思います。その中で母として、社会人として良く奮闘されてきたと思います。

今回のフォーラムを通して、皆さんの書き込みを見ていると今まで以上に自律神経症状を訴えられている方が多いと感じます。そのため、普通神経症や不安神経症の方にも自律神経症状の対応について記載したため、是非ご参考いただければと思います。私は、倦怠感など自律神経症状の背後には日頃の疲れ、過緊張、そして冷えがあるのではないかと、常日頃の診療で感じています。

その中で、今回Pさんに特にお伝えしたいのは、過緊張への理解とその対応についてです。Pさんは職場の同僚の前だけでなく、もしかするとお子さんの前でも、きちんと振る舞うということが当たり前になっていたのかもしれません。周囲から「クールに平然と仕事をし、悩みがなさそうだ」と言われたことに衝撃を受けた訳ですが、この衝撃はPさんにとって客観的に見える自分と実際の自分に大きな相違があるという事実を教えてくれています。このような乖離がある場合、その背後には「弱みを見せたくない」という思いや不安が認められることが多いと感じています。自分から辛い心情を吐露することは、自分のプライドが許さないのだと思います。

しかし、このように吐露できない姿勢が強くなればなるほど、「今度は辛い心情を察してほしい」という思いだけが心の中に鬱積することになります。その結果、大変であることを分かってもらうまで、常に仕事などにひた走ることになるのだと思います。もしかすると、このような姿勢が、皮肉なことにクールと受け取られたのかもしれません。しかし、このような鬱積をもしPさんが抱えていたとしたら、その緊張は相当なものになります。当然、心身は消耗し、その結果として倦怠感などの自律神経症状を呈してもおかしくありません。

勿論、優先すべき治療的対応は当然ながら身体的な自愛にあります。しかし、Pさんの場合、中長期的には、周囲の評価を恐れながら自身の困っていることや不安などを伝えることが、過緊張を緩和させる上で不可欠と考えます。以心伝心などという言葉は、相当相手と懇意にならない限りあり得ないと思った方が良いでしょう。むしろ、言葉で伝える事によって、相手に自分のことを知ってもらうだけでなく、Pさんが相手の新しい面を発見することにも繋がるはずです。そして、双方が分かり合えることで、Pさんの過緊張は初めて静まりを見せ、その結果として自律神経症状が軟化すると考えます。

勿論、最初からこのような取り組みはスマートにできません。また出来なくて良いのです。むしろスマートでない所に、Pさんの意外性と人間味を皆さんは感じると思います。大変ですが、是非奮闘されて下さい。
(樋之口潤一郎)

Nさんは高校生で「自分の容姿へのコンプレックスで学業や恋愛は全く手がつかない、家の外にも出られない」と書かれています。苦しい状況ですね。

10代は「自分」という意識が強く現れる時期で、「他の人から見た自分」にも強く意識が向く時期です。けれども「これが自分」という確かなものはとらえがたく、答えの見えないものでもあります。そしてこの時期は「友達に好かれなければならない」「同世代の中で浮かないようにしなければならない」といった「かくあるべし」に縛られやすい時期ともいえます。こうした中で容姿に関わることがあたかも「自分を計るものさし」のようになってしまい、とらわれてしまうのが身体醜形障害の状態といえます。

さらに「一日中鏡を見て過ごす」こと、あるいは逆に気になることを避けるために人と接する場面をさけることで、ますます意識が気になっている部分に向き、悪循環が起こってしまいます。もしかしたらご自身なりに「なんとかしよう」としている試みが、ご自身をがんじがらめにしているかもしれません。

とはいえ、「気にしないように」と気持ちをねじ伏せようとしても、無理な注文をつけることになってしまいます。

まずは、ご自身の悩みが人との関係を損なうまいと思えばこその悩みなのだ、ということを受け止めてみてください。

そして、悩みを抱えたまま、今できる行動に入ってみましょう。このときのポイントは、人と関わることに関係したことだけに取り組むのでなく、生活全体を見まわして、今できることから取り組むことです。外に出るのが難しい場合は、家の中で、勉強でも、好きなこと、得意なことでもいいので、手をつけてみましょう。

その日の行動を記録するために日記を活用するのもよいでしょう。悩みを抱えた自分のままやれることがちゃんとあることに気づけるはず。そんな中で「〜したいな」に気付けたら、しめたもの。自分の中の小さな「生の欲望の声」に耳を傾けてみましょう。
(塩路理恵子)

森田療法はもともと不安障害(神経症)に対する精神療法として生まれました。うつに対する森田療法はその応用編であり、特にうつの度合いによって不安障害に対するアプローチと時期によって若干異なります。

不安に対して森田療法では不安の裏側に何かしらの過大な欲求(森田療法では生の欲望と呼びます)があると読み替えます。欲求が強いから不安が強まるわけです。逆に欲求が少ない人は不安にもならないわけです。学生が試験前に「大変だ、できない」と騒いでいる人ほど実際は良い点を取っていることを間近にした方も多いのではないでしょうか。欲求が過大であるからこその不安なのでこの不安を排除しようとすることがますます症状を悪化させてしまいます。 よって森田療法では不安を排除することをまずやめるように伝えます。ただ不安を排除することをやめるだけでなく、不安の裏側に潜んでいる本来の欲求に従って行動することを促します。それがある意味、「気分本位」でなく「目的本位」に動きましょうという言葉に通じます。

うつに対しての森田療法はうつの症状が強い初期段階では不安障害に対するアプローチとは異なります。
うつ病の米国DSM5診断基準を照らすと、
(1)抑うつ気分(憂鬱な気持ち)、または
(2)興味または喜びの喪失のうち少なくとも一つは存在し
(3)体重の変化
(4)ほとんど毎日の不眠か過眠
(5)ほとんど毎日のいらいらまたは行動の抑制がかかる、
(6)ほとんど毎日の疲労感
(7)罪責感と無価値観
(8)集中力の低下
(9)死にたい気持ち、のうち5つが同じ二週間に存在していることが基準になっています。

これを満たすようであれば、うつ状態からくる否定的な思考があるのではないかと思います。これを満たすようであればきちんと抗うつ薬を使用し無理をしない方が良いでしょう。

回復の過程は個人差がありますが、以上の症状が少しずつ階段を上がるように回復していきます。我々は患者さんに「今どのくらいの回復度合いですか」と訪ね、%で表現してもらうようにしています。症状がでそろっているいわゆる「極期の過ごし方」は、「果報は寝て待て」が大事になります。簡単に言うと家でごろごろしていて良いわけです。30%前後から50%くらい、「回復前期」の時は、「毎日の中での変動が目立つ」のですが「どん底を過ぎれば必ず回復が訪れる」と思っていて下さい。 この時期は「疲労感」を主な基準として、疲労感が強い時は休息し、軽い時は手をつけやすいところから手をつけていきましょう。これが「臨機応変」という対応です。

また「感じから出発する」のが大事です。何かしたい気持ちがあればそれを少しずつ行動に移して疲れたらまた休んで良い訳です。本来の状態の60〜70%くらいまで回復してきたら、生活リズムを規則正しくして生活を整えて行く、「外相を整える」ことが大事になってきます。 また、今までの自分の生き方を見直す時期でもあります。「かくあるべし」といった思考にとらわれず今の現状の中で出来ることをしていくことが大事になります。

ただ実際には不安とうつを合併していて急性期で休息をした方が良いのか、あるいは休まず建設的な行動をした方が良いのか迷うケースもあります。このあたりは実際の診察をしないとなんとも言えませんが、目安として (1)憂鬱な気持ちはあっても行動がおっくうではない
(2)特に仕事以外の趣味や遊びへは動くことができる
(3)睡眠、食欲はある程度薬剤調整で取れているような場合はただ休息をしていても治療は難しいかもしれません。
ただ最終的には医師のうつに対する評価があって「〜したい」方向への行動をしていくことが大事かと思います。お大事になさってください。
(舘野歩)

Tさんを悩ませている上のお子さんの問題行動とはどのようなものでしょうか?下の子を叩く蹴る、罵声を浴びせる、親の言うことを聞かない、といったことでしょうか?私は男性ですので、母親の苦悩を身をもって体験したことはありませんが、いくつか助言させてください。

二人のお子さんを育てる中、上のお子さんの問題行動が目立ち、兄弟喧嘩が絶えないということで、Tさんはとても苦労されているとお察し致します。 一つ目は、お子さんはのびのび過ごせているかという点です。お子さん達に笑顔はありますでしょうか?また、笑顔がある時はどんな時でしょうか?子供達は独自の世界観があり、ありのままの自然な欲求を発揮しながら成長していきます。親は子供の年齢に合わせ、子供の欲求を引き出してあげるガイド役と、社会のルールや種々の躾を教える指導役を同時に行っていく必要があります。

上のお子さんが問題行動を起こすということは、なにか本人の中でうまくいっていないことがあるのではないでしょうか?子供はそれぞれ個性がありますので、なにに困っているのか、なにが嫌なのか想像してみてください。親の価値観ではなく、自分が子供になったつもりで想像を巡らせてみるとよいです。

上のお子さんが発達障害とまではいかないと言われても、どこかで上のお子さんの問題行動にばかりに、目が向いていないでしょうか?もちろん問題行動を律することも大事ですが、上のお子さんの長所を拾い上げ、それを伸ばしていく観点も大事ではないでしょうか?例えば物事に対して凝り性であれば、その凝り性のエネルギーが勉強や趣味に向けば上のお子さんの自信にもつながるでしょう。勉強だけでなく運動など様々な観点からお子さんの長所を探してみましょう。

二つ目は、Tさんが持っている理想の母親像はどんなものでしょうか?“子供をきちんと育てたい”、“将来不自由なく暮らせるようにしてあげたい”、という気持ちは皆さんが持っていると思います。もしこの気持ちが無く、非人間的な母親がこの世に存在するとすれば、お子さんが喧嘩しようが泣こうがお構いなしでしょう。つまり、Tさんはその真逆で、子供への愛情を人一倍もってらっしゃるのだと思います。強すぎるが故、“子育てをちゃんとやらなくては”という“かくあるべし思考”が強くなっているのかもしれません。“こんな母親で申し訳ない、情けない”という気持ちや、上のお子さんへの怒りも出てくるかもしれません。それとて、自然な感情であって、その感情を押し殺そうとしてはいけません。Tさんも人間なのですから、悪の感情が沸き上っても当然です。ネグレクトさえしなければ、感情はそのままにしてよいのです。そして、日々やるべき家事をほどほどにこなしていくことです。

三つ目は、子育ての悩みを一人で抱えていないでしょうか?外からみれば立派なお母さんでも皆苦労しています。学校教師をしている母親であっても同じです。子育ては一人で行うものではなく、父親、両親、社会の人々など、皆で協力して行うことができると良いですね。Tさんが今回投稿されたことや、カウンセリングに通いだしたことはきっとプラスになると思います。また、子育てから少し離れ、Tさん自身が好きなこと取り組む時間を確保することも大切だと思います。Tさんにとって、苦労はあっても喜びを感じながら子育てができる日が来ることを願っています。
(鈴木優一)

Cさんは、抑うつの症状がなかなかなくならないことを悩んでいます。離婚後、一人でお子さんを育てるプレッシャーからうつ病を発症したとのことでした。お母様に家事を助けてもらう現状の中で、本当は働きたい、母親に親孝行をしたい、息子に美味しい料理を作りたいと思いつつも体と心がついていかないと書き込まれています。

「しんどくても辛くても、やらなければいけない!私がやらないと誰がするの?頑張らないと!」という気持ちが常につきまとっているとも書かれていますが、確かに一人でお子さんを育てることは大変なことだと思います。ずっと気を張って、フル回転で頑張ってこられたのでしょう。でも、人生は長いマラソンのようなものです。ずっとダッシュをしていたらもたないのと同じように、頑張り続けていたら疲れ切ってしまいますよね。

一人でやれることには限界があります。Cさんの場合、親子二人の生活で、物理的に一人で担わざるをえないことが多いのだと思いますが、それ以上に、頼ってはいけない・・と心のどこかで思って自分を追い詰めてしまっているのかもしれません

私達は、誰かに気持ちをわかってもらったり、時に手助けをしてもらいつつ生活をしているものです。頼ること自体が悪いことなのではなく、頼るところは頼りながら、頑張るところは頑張ることが本当の自立であり、無理のない生き方なのではないでしょうか。

頼り下手なところは、薬に対しても同様かもしれませんね。薬に頼ってばかりではいけないのでは?という思いもあったようですが、これまでの体験フォーラムのアドバイスや他のメンバーのアドバイスからもご理解頂いたように、薬も上手に使いながらまずはご自身のペースをつかんでいくことだろうと思います。

落ち込みが長引いているとしたら、どこか力の加減がずれていたり、「〜すべき」と自分に無理な要求をしてしまっているところがあるのかもしれません。そうした自分の癖を知るために、日記などを書いてみるのも一つの方法だと思います。日記であれば、愚痴や弱音を吐いても問題ありません。お母様に助けてもらったり、ガス抜きの方法を探りつつ、Cさんが本当にしたいこと(親孝行やお子さんへの料理など)を少しずつ実行していきましょう。そうした一歩一歩が、自分らしく生きていく手ごたえになっていくと思います。
(久保田幹子)

Hさんはうつを発症してから、休職・復帰・退職と苦労の多い7年間を過ごしてきてらっしゃいますね。再発を繰り返す、または回復しきらないうつの背景に神経質性格や不安が関わっている場合、森田療法が有効です。誘因や症状は詳しくわかりませんので、一般的なことを書きます。

まず適応についてですが、死にたい気持ちが強く、実際に死のうとしたり衝動的な行動がある場合、森田療法を行うには病状が重すぎる状態といえます。森田療法はうつのどん底の時には適応にはなりません。回復期で衝動的な行動が概ね落ち着いたときに行うのが望ましいです。

近くに森田療法を行っている医療機関がない場合、コメントにもありました通り生活の発見会という自助グループに参加して頂く方法もありますが、当院(東京慈恵大森田療法センター)での入院森田療法もあります。入院森田療法は通院できない地方からの患者さんも多く来ています。外来より入院は短期集中型です。さらに普段の行動を医師・看護師が実際に見ながらアドバイスできるということが入院の最大の利点で、外来森田療法との大きな違いです。

入院治療では、「うつ」の言葉一言でくくられた苦しさ、生きにくさを一つずつ拾っていく作業をしながら「うつ」の中にあった様々な感情を振り返り、それと同じ状況や感情が入院の場でも繰り返されたとき、それを主治医と話し合いどう対処したら良いかと一緒に考えていくことが出来ます。実際にうつの方の入院治療を経験すると、同じうつでも各々背景や道のりが異なります。自己への理解を深めながら、目の前の作業も行っていきますので仕事に戻るときのリハビリとして入院森田療法を経験される方もいます。参考になったかはわかりませんが、森田療法が役立つ部分があれば幸いです。
(石山菜奈子)

Aさんは過去10年間、抑うつ神経症、うつ病、双極性障害の薬物治療を受けてきたけれどもなかなか改善が見られず、今も身体の重さ、不眠、自尊心の低さなどに悩まれているとのことです。診断の差異については、内因性の要素が強いのか性格因的な要素が強いのか、Aさんの経過をどう理解すると一番しっくりくるのか主治医の先生も迷われる面があったのかもしれませんね。現在のように何も楽しめず、食事もおいしくなく、朝起き上がれず横になったままの日々が苦しくてどうにもできないというのはかなり辛い状態だと思います。意欲を失ってしまったような感じでしょうか。

短い書き込みの内容からですが、森田療法はかなりAさんの役に立てるのではないかと思います。第一に、森田療法は自分(自分のありのままの感情、自分の考え方や反応の仕方の傾向、身体の強さや傾向など)を知り、そのありのままの自分でどう生きていったらよいかを模索していく精神療法だからです。自分がどこで行き詰って、何が辛いのか。それを少しずつ理解し、できることに手を付けて積み重ねていくことで、Aさんの生活は少しずつ進んでいくはずです。第二に、Aさんはもともと不眠や自信のなさといった傾向はあったけれども、夢を追いかけていた際には何とかやっていたということを書かれています。夢の実現は思うような形にはならなかったかもしれませんが、そこにはこういう風に生きたい、やっていきたいというAさんの思いがあるのではないでしょうか。これは森田療法でいう生の欲望に当てはまるのではないかと思います。自分を生かしていく原動力ですね。その力を生かすためにもまずは好きなことにも無反応になるほどに疲れ切ってしまっている体を整えていく必要があります。

10年の通院歴ということなので医療機関についてはよくご存知かもしれませんが、もう一度行って話してみても良いなと思う先生などはいらっしゃいますか?八方塞がりはひどく辛いですが、これはこれまでのやり方を変えていくチャンスでもあります。今の状態を何とか打破していきたいとしたら、家庭内の理解を得るためにも、やはりAさんの状況を理解し援助してくれる専門家の力があると良いと思います。元の主治医の先生でもよいですし、メンタルヘルス岡本財団の電話相談などで治療機関などを推薦してもらうか、経済的なことが気になるようでしたら、精神保健福祉センターなどで相談するのもよいかもしれません。

なかなかAさんの状況が難しく理解者を得るのが大変なのかもしれませんが、睡眠薬の経緯などを伺うと、行動の背景にあるAさんの中のいろいろな気持ちや考えが医師も含め周りの人にどのくらい伝わっているだろうとすこし疑問に思いました。そもそも不調だとそれだけで自分の状態を説明することは億劫になるかもしれませんが、薬の副作用が気になって断薬したくなったり、実際に一旦やめてしまうことは精神科通院中の患者さんにあることですし、止めたくなる気持ちと睡眠薬を飲みたい気持ちの両方を話し、どちらの気持ちも踏まえて相談に乗ってくれる先生を探して行くことがAさん全体の生活の改善への近道ではないではないかと思います。もうされているかもしれませんが、相談の際には、相手の心情を慮ることや「かくあるべし」はちょっと脇において、フォーラムで話してくださったように自分の率直な気持ちや考えを話すようにしてみていただけたらよりAさんの事を理解してもらいやすいと思います。
(今村祐子)

Mさんは正義感が強く、真面目で頑張りすぎて、症状が出て初めて気付くパターンで困っています。先日はうつ病と診断されたとのことです。

真面目で正義感が強すぎる現状を「何とか良い意味で脱力したい」と書かれています。真面目や正義感が強いということは決して悪いことではないのですが、そのために体を壊してしまっては元も子もありません。今回うつ病と診断されたとのことですので、まずは主治医の先生と相談し(しっかり休む)(薬で治療する)などうつ病の治療に努めることをお勧めします。うつと不安については、不安障害にうつが併発することがありますし、うつ病に不安や焦燥感が出てくることがあります。うつが軽快して改めてそれら症状との付き合い方を考えてみる際に森田療法が生きてくると考えます。

「身体を壊してから気づく」パターンの方は、身体の徴候を(ストレスがかかっている)や(頑張りすぎている)などの気付きのヒントにとらえなおすことをお勧めします。体調の変化が出てきたときに、やり過ぎていないか考えてみるアラームとしてとらえるのです。そうすることで早めに対処することが可能になり、さらには長続きするやり方が掴めてくると良いですね。
(矢野勝治)

Aさんは独身でご両親も高齢となり、将来に対する孤独感などが不安で困ってらっしゃいます。また、「もう歳だから、と夢や希望を持てていない」とのことですね。Aさんの今の環境で、「将来、誰とも話さなくなるのではないか、病気になったら…」と不安になるのも無理はないと思います。ただ、頭では「当面は仕事など、やらなければならないことをやっていって、将来の不安は実際に起きたときに、一つ一つ対処していくしかない」と分かっていらっしゃるようですね。それでも、将来の不安が襲って来た時にそれにとらわれてしまうようですね。

Aさんがおっしゃるように、急に考え方や今の生活をがらりと変えようとするのは無理があると思います。ただ、本当に「もう歳だから無理」なのでしょうか。そして、不安になった時に、じっと耐えている以外に方法はないのでしょうか。

感情の法則はその時の感情をしっかりと味わえば、自然とその感情は緩やかに収まっていく、というものです。将来のことを考えて不安になった時に、じっと耐えていると不安だけが増大してしまうというのは、その不安を味わわないように、感じないように、どうにかしようと頭の中だけでもがいているからのようにも思えます。「将来のことを考えて、不安を感じること」はどうにもなりませんが、その不安を打ち消そうとしなければ、不安が増大することは防げると思います。

Aさんがおっしゃるように、先々のことについては、自分ではどうにもならないことも多いので、これに関しては頭でなんとかしようとせずに、Aさん自身でなんとかなることに力を注いでいきましょう。寝る前に将来の不安に襲われるのであれば、その不安はそのままに、まずは明日をどう充実させようか、何が出来るか、考えてみましょう。大きな夢や目標を立てなくても大丈夫です。何か先延ばしにしていることはないでしょうか。ほんのちょっとでもいいのです。ちょっと頑張れば出来そうなことというのは沢山あるはずです。年齢は実は大きな問題ではなく、自分で「無理」と決めつけてしまっていることが問題なのかもしれません。将来を決めるのは「今」の行動や生活です。是非とも頑張ってみてくださいね。
(谷井一夫)